艦これSS投稿スレ154

154 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/10/29(火) 15:30:26.89 ID:DhDF/SVd0

【居酒屋 鳳翔】

「今日の業務終了?。」
背筋を伸ばしながら独り言を呟き壁時計を見る。
(22時を回ったところか・・・明日は休みだし)

夕飯は食べたがおなかが減ってくる時間だ。となると行くところはひとつ。
処理した書類を片付け、簡単に机の上を整理してから席を立つ。

部屋を出た先の廊下は昼間は誰かを呼ぶ声や機械の音で煩い程だが
22時も過ぎればそんな喧騒もなりを潜めていた。
駆逐艦の娘達も今はぐっすり寝ているのだろうか。

明日が休みとなると足取りも軽くなる。今日は何を食べようか 思案をめぐらせながら食堂へと足を運ぶ。
いつのまにか日が落ちるのも早くなり、だんだんと寒さも増してきて冬の足音が少しずつ聞こえてきたようだ。

長い廊下の先に見えてきた食堂の窓ガラスからはほんの少し明かりが漏れて廊下をやさしく照らしていた。
微かに声も聞こえてくる。先客がいるようだ。

「お邪魔するよ。」
いつもは全ての照明が点いていて明るい食堂だが、今は最低限の照明しかついていないので雰囲気がガラっと変わっている。
その少ない照明の下では数人の艦娘達が小さな宴会を開いていた。

「おまえら、飲みすぎるなよ。」
おまえらと口にしたが実際には一人に向けた言葉を向けつつ艦娘達の横を通り一つ隣のテーブルに座る。
「提督ーせっかくのお酒だせ。楽しもうぜー」っと既に出来上がってるのか準鷹が一升瓶を持って近づいてきた。
「主にお前に言ってるんだがな、準鷹。」相変わらずの飲兵衛だ。準鷹の顔は既に紅潮していた。
「まぁまぁ まずは一杯。」
私の言葉はどこ吹く風か なれた手付きでコップに焼酎を注いで渡してきた。

「提督もご一緒しませんか。」「そうしようよ提督ー。」
翔鳳と瑞鳳のふたりも少し顔を赤くさせている。

1人でまったり飲むお酒も好きだが話しながら飲むお酒ももちろん好きなのだ。
艦娘達のテーブルに移動してからふと気づく。
「飛鷹はどうした?」
静かにお酒を飲む彼女だが、いつもいる面子の中にいないと気づいてしまうものだ。

「あー、あいつは今日夜間だよ。」
おっと、言われてから気づいたがそうだったな。
軽空母の彼女の出番は夜間対応と言っても日が昇ってからではないと動けないため暇をもてあましてるだろう。
うちの鎮守府では夜中の敵襲に備えて3?4隻戦闘体制を整えてある。
今まで夜中に敵が襲ってくることはなかったが備えあれば憂いなし、だ。


「提督、何か食べられますか?」
鳳翔が調理場から声をかけてきた。
ここでは鳳翔が料理人だ。
もともと料理が好きだった鳳翔が食堂での晩酌時に軽い食事をつくったことが発端になり
その料理が好評でその場に居合わせなかった艦娘達が更に鳳翔に翌日料理を頼み
いつのまにか晩酌時には鳳翔が料理をつくることが定番になってしまった。
その結果言われるようになったのが「居酒屋 鳳翔」。
営業は休日及び休日の前日、営業時間は不定。メニューなし。

夜中まで艦娘を働かせるということに抵抗があった私だが
「好きでやってることですから。楽しいんです。」
と鳳翔に言われてしまえばそれを無理やり止めさせることは出来なかった。
今は私も常連みたいなものだ。

常連といえばこの場にいる準鷹、翔鳳、瑞鳳の三人と今日はいない飛鷹がいつもの4人組の常連だ。
他には赤城と加賀、翔鶴と瑞鶴 妙高型の4人がいるが彼らは基本同日には合席しない。 
いつのまにかグループごとで行く日が決まっているみたいで
常連のルールらしきものが出来上がってるようだ。
一同に介して鳳翔に負担をかけないようにする意味もあるのだろう。
155 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/10/29(火) 15:36:21.72 ID:DhDF/SVd0
しかし同じ軽空母同士で飲む4人に比べ正規空母の2組は避けているようで
2組が一緒に飲んでいるところは1度しか見たことがない。
単に瑞鶴が加賀を避けているようだが。
加賀は翔鶴瑞鶴を下に見ているところもあるが実のところ
翔鶴瑞鶴に助言を送ったり練習につきあったりして面倒見がいいのだ。
言い方が悪いところはあるが・・・
それを瑞鶴は鬱陶しいと思っているところもあるのだろう。
周りでは一航戦と五航戦は仲が悪いと言われているが実際はそこまで仲が悪いわけではない。
逆に切磋琢磨し合えるいい仲だと私は思っている。二人には否定されるだろうが。


「小腹が空いてるんだけど、何があるかな?」
基本的には食堂の残り物、あとは鳳翔さんが好みで食材を選んでいるため特定のメニューはほぼ無い。
「そうですね、直ぐに出せるものでしたら和えた物ですね。時間を頂ければお魚も焼きますが。」
「じゃあ、その二つをお願いしようかな。」
「かしこまりました。」
やさしい笑顔で頷くと鳳翔はそのまま冷蔵庫に向かい食材を準備し始める。
鳳翔が出す料理に外れは無いので食事の心配は無いだろう。

そう、心配なのは今目の前に座っている酔っ払いだ。

あれぇー提督ぅーコップ空いてるじゃんかーーーーー」



今日は長い夜になりそうだ。
鳳翔が魚を焼き始めたのを横目で見つつ並々と注がれた2杯目の焼酎に口をつけた。


居酒屋鳳翔は今日も盛況だ。


                              終わり

  • 最終更新:2013-10-29 20:38:21

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